生活科学は、人間の生活に関わる具体的な問題を対象とし、「衣・食・住」を中心とする生活全体の快適性や、社会との関わりを視野に入れた幅広い学問です。被服学、食物学などの生活科学・技術領域、住居学、環境デザイン学などの生活環境領域、児童学、生涯発達学などの人間発達領域などが主な研究分野となります。
そのほかにも、家族や家庭の問題を社会学・経済学・法律などの観点から研究する生活経営領域、生活を文化的な側面から研究する生活文化領域、福祉的な側面から研究を行う生活福祉領域、情報化社会の中での家庭生活を考える生活情報領域、生活と産業・流通・消費の関係に焦点を当てる生活産業領域などの分野があります。学究的な側面と日常に関わる実学的な側面の両方からアプローチすることになります。
学習領域の広さから、進路はさまざまな職種・業種におよびます。福祉行政部門などの自治体職員、消費者トラブルの相談員などの社会貢献度が高い職種や、消費生活に関わる民間企業、マスコミ関係まで、多岐にわたります。
日本女子大学 家政学部 食物学科 准教授 太田 正人 先生
味覚には甘味・酸味・塩味・苦味・うま味などがあり、人間は主に口の中でこれらの感覚を味わっています。味をこのようにいくつかの要素に分けて考察したのは、紀元前350年頃の古代ギリシャの哲学者・アリストテレスですが、なぜ人間がこれらの基本味を感じるのかについて分子レベルで解明されたのは、1900年代末のことです。
人間の口の中の細胞の表面には、レセプター(受容体)と呼ばれるタンパク質があり、甘味には甘味の、酸味には酸味のレセプターがあります。塩味、苦味、うま味、脂味などのレセプターもそれぞれ存在します。これらのレセプターは、自分が受け持つ味の要素が口の中に入ってきたときにそれと結合し、その情報を脳に伝えます。それによって、人間は味を認識するのです。
しかし、これらのレセプターは口以外にもあることがわかってきました。例えば、苦味のレセプターは、鼻の中の繊毛上皮や胃などの平滑筋にもあります。苦味のある物質はしばしば毒性をともないますから、鼻の中の繊毛上皮は、苦味物質をブロックしていると考えられます。胃の平滑筋にあるレセプターも、毒物を排除する役割を果たしているのです。ほかにも、味覚に関するレセプターは体のあちこちにあり、さまざまな生理機能を担っています。
これらのレセプターが受け取った情報を脳に伝える「味覚の伝達物質」についても、研究が進んでいます。例えば、幼児が突然、食べ物を選り好みするようになることがありますが、それは単なる「わがまま」なのではなく、味覚の伝達物質の働き具合によるのです。同様に、甘い物を食べ過ぎるという行動も、甘味レセプターとその伝達物質の働きとの関係が考えられます。こうした味覚のメカニズムの解明がさらに進めば、嫌いなものをおいしく食べる方法や、食べ過ぎを防ぐ有効な方法を科学的に構築できるかもしれません。この分野の研究はまだ始まったばかりです。
愛知産業大学 造形学部 スマートデザイン学科 教授 伊藤 庸一郎 先生
AI(人工知能)と聞くと、クルマの自動運転などを思い浮かべる人が多いでしょう。そうしたAIとは一線を画す新しいAIが登場しつつあります。それは、一人ひとりに寄り添う「やさしいAI」です。生活に溶け込んでユーザーをモニタリングしつつ、健康、趣味、コミュニケーション、エンターテインメントなど、毎日の暮らしのあらゆる場面で、その人に合ったサポートをするのです。人とAIの関わり方がガラリと変わります。
心地よい目覚めに導くためにやさしく起こす時計は、その人に最適のタイミングを見つけ、IoT(モノのインターネット)で連動して部屋の窓をそっと開け、さわやかなそよ風で目覚めを促します。朝の身支度では、その日の気温や気分、予定などのニーズに合わせてコーディネイトを提案したり、ヘアアレンジやメイクをシミュレーションしてくれます。出かける際にはタクシーを手配したり、「銀行へ行くなら、この店にも行ってみては?」などと外出をサポートします。帰宅したときに玄関で鍵を落としたら、「落としたよ」と教えてくれます。テレビを見てくつろごうと思ったら、お気に入りのタレントや気になる情報に関する番組をおすすめしてくれます。このように、一人ひとりの行動を予測して必要な行動を考えるのが、「やさしいAI」の最大の特長です。
こうした「やさしいAI」は2つのデザインによって産まれます。AIはモノに命を吹き込むような機構なので、機械やソフトがうまく働くことを考える「機能のデザイン」がまずひとつです。そして、使うのはやはり人間なのだから、人間が何を欲しているかをよく知ろうという「人間中心なデザイン」がもうひとつです。この2つのデザインをマリアージュしたものが「スマートデザイン」です。そして産まれるモノが、人をよく理解して「ごきげん」を生む製品になれば、スマートデザイン成功なのです。
お茶の水女子大学 生活科学部 食物栄養学科 教授 藤原 葉子 先生
食事で摂取する油(脂肪)に対して、あなたはどういうイメージを持っているでしょうか? 「食べると太る」「体に悪い」など、どちらかというと、マイナスイメージが多いかもしれません。
しかし、油の主成分である脂肪酸は、生命維持に不可欠な栄養素です。人は油を食べずしては生きていけません。それだけでなく、油は、炭水化物・タンパク質と比べても、グラムあたりの熱量が豊富で、非常に効率のいいエネルギー源となります。また、炭水化物・タンパク質は、水とともに体内にとどまるので、かさばって重くなり、ある程度の量しかエネルギー源として貯蔵できませんが、脂肪は水に溶けないので、コンパクトに体内に貯蔵できるという利点もあります。油がゆっくりと分解・消化されるのも、水に溶けないという特徴によるものです。
魚油にはDHA(ドコサヘキサエン酸)が豊富に含まれています。体内でつくることができず、食事などによって外部から摂取しなければならない脂肪酸を「必須脂肪酸」と言いますが、DHAもそのひとつです。
DHAは、人間の脳にもたくさん存在することから、「魚を食べると頭がよくなる」とよく言われます。実際に頭がよくなるかどうかは不明ですが、DHAが脳や神経の発達に不可欠であることは間違いありません。油は、ただエネルギー源となるだけでなく、体の機能を調節していく上でも重要な役割を果たしているのです。
油が人間にとって不可欠だからといっても、過剰摂取は肥満や生活習慣病を招きます。何事もバランスが大切です。そこで注意してほしいのは、油には無意識に摂取してしまいがちな「見えない油」があるということです。
動物性のものでは、肉類、魚介類のほか、卵類、乳類にも油は含まれています。また植物性の見えない油は、穀類や豆類などに含まれています。日常の食事で油の摂取量を調節する際、バターやマーガリンなど目に見える油の量だけでなく、こうした見えない油にも気を配ることが大切です。
広島大学 生物生産学部 生物生産学科 教授 上野 聡 先生
マーガリンとバターは似ているように見えますが、その違いを知っていますか? マーガリンは、バターの代替食品として開発された加工食品です。原料は植物油脂です。ところが、植物油脂は常温では動物油脂と違って液体になります。これは分子構造で言えば、炭素同士が二重結合部分を持っているためで、この結合部分が曲がっている(シス型)ために分子が集合しにくく、結晶化しにくいのです。これに対し、バターのような動物油脂には二重結合がないため分子が直線的(トランス型)で結晶化しやすく、常温でも硬化します。
そこで、植物油脂を常温で硬化させるために、シス型の結合を直線的なトランス型に変えるという方法が考えられました。それを可能にしたのが、植物油脂に水素を添加する「水素添加法」です。トランス型は動物油脂の分子構造に近く、常温で硬化します。近年まではこの方法でマーガリンは製造されていました。ところが、この製造過程でできるトランス脂肪酸が体に悪いという議論が欧米を中心に起こりました。トランス脂肪酸を取り除くことは難しいために、各国は何らかの対応を迫られ、米国は2006年からトランス脂肪酸量の表示を義務づけました。
それ以来、水素添加法は下火になりました。しかし、植物油脂を常温で硬化させるという課題は残っています。そこで採用されたのが、高融点の植物油脂であるパーム油を配合するという方法です。現在この方法はマーガリン製造方法として一般的ですが、使用しているうちに「つぶつぶ」が出てくるという問題があります。これは、冷蔵庫への出し入れによる温度変化で結晶化が早まるために起こります。このつぶつぶは二重構造になっている粗大結晶と言い、中心に融点の高い核があります。そのまわりにパーム油の主成分であるPOPが集まっていることが研究の結果わかっています。
奈良女子大学 生活環境学部 情報衣環境学科 教授 才脇 直樹 先生
私たちの日常生活を支える要素技術の一つに、人と機械の関わりを考える「ヒューマンインタフェース(HI)」があります。誰もが使いやすく適切に応答するスマートなシステムを実現するためには、単にモノ作り技術に精通するだけでなく、人間の五感や思考がどういうものなのかや、デザインの原理を理解するための学際融合的な研究が重要です。
例えば、外界からの刺激に対する感覚や思考を情報処理の観点から考えるには認知心理学、それらに人間が反応する仕組みを調べるには医学や生理学、脳科学といった専門分野がありますが、これらの知見を生かし、目的に応じた学際的で自由なモノ作り研究に取り組めるのがHIの醍醐味です。
一方、HIの技術を生かし、生活と密着した新たなモノ作り分野として立ち上がりつつあるのが「生活工学」です。例えば、2006年頃、センサと繊維を融合させたスマートテキスタイルを用いて、妊婦と胎児の心拍を測定できるIoT腹帯が開発され、医師が遠隔診療で見守れるデバイスとして、特許申請も行われました。また、介護施設で認知症の患者さんの食事やトイレ、運動などの回数を、においと振動で測り自動記録するシステムもあります。これは多忙な介助者でもケアプランを立てやすく、効率的なワークフローを実現できるように開発されました。さらに、異なるアプローチとして、紫外線計測アクセサリもあります。例えば、ヘアバンドに取り付けたセンサで計測した紫外線のマップをスマホに表示し、クラウドを通じて日焼けしない観光ルートを共有できます。
このようなHIや生活工学の考え方を生かし、少子高齢化や地方創生、SDGsといった喫緊の課題解決と社会実装技術を研究するには、理系だけでなく文系的な発想や知識も必要となります。こうした研究領域を広くまとめて、「人間情報学」といいます。安心・安全・快適な未来を開く大きな可能性を秘めていることが魅力です。
興味のある勉強を基礎から学べる環境だと思ったから。
建築士になると言う夢を叶えていて私も建築士の夢を叶えたいと思ったから。
管理栄養士の資格を目指す
さまざまなプロジェクトの経験を積むことで人間としての実力につながる教育を目指しているところに魅力を感じたからです!
興味のある生活科学について勉強出来る国立大学で、評判も良く、落ち着いて勉強できそうだと思ったから。
情報について深く学べるから
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日本女子大学 家政学部
管理栄養士の国家試験の受験資格が得られる
私の学びたい経済系と食品系のことが学べるから。