医学は、人間の健康の維持・増進、疾病の予防と治療への貢献を使命とする学問です。6年間のカリキュラムで専門知識を身につけ、医師免許の取得をめざします。国家試験合格後は2年以上の臨床研修が必須となっています。その分野は基礎医学、臨床医学、社会医学の3つに分類されています。
「臨床医学」は、医療の現場で実際に患者の診療と治療を行います。「基礎医学」は、解剖学や生化学、病理学といった医学の基盤分野を研究することで、人体の構造や機能・メカニズムについて研究し、それによって病気の原因や発症から治癒への経過を明らかにすることをめざします。「社会医学」は、法律との関係を研究する法医学のほか、病気の予防を目的とした公衆衛生学、さらに地域医療など、医学と社会との関わりも考えていく分野です。
主な進路は、臨床医・基礎医学研究・行政の3つです。卒業生の大半は医師国家試験を受験し、臨床医・研究医をめざします。基礎医学を志す人は、基礎系の大学院へ進学します。公衆衛生学・環境医学の研究や医療行政に携わる人もいます。
弘前大学 医学部 医学科 教授 漆舘 聡志 先生
「形成外科」という名前は知っていても、どんな分野なのかをはっきりと説明できる人は少ないかもしれません。形成外科には「やけどやけがなどの外傷」「皮膚軟部組織の腫瘍切除とその後の再建」「体表面の先天異常」「美容外科」という4つの柱があり、さまざまな身体の部分を創るいわば「創造する外科」です。人の目に触れやすい箇所の組織再建なども手掛けるため、一昔前の「ただ治ればいい」という考え方から、治癒を前提とした「社会復帰をサポートするための施術やフォローアップ」が必須の時代へと変化してきています。
皮膚の再建には欠損部に隣接する皮膚や近辺の皮膚を移動させる「局所皮弁」という手法がありますが、これを用いると手術箇所との質感や色の差異が少なくなります。さらにほうれい線や目の下などのポイントに合わせて境目をつくることで傷跡が目立ちにくくなり、その後の社会復帰にも大きな助けとなっています。
患者さんのほとんどは悩みやコンプレックスを抱いています。そこに寄り添いながら信頼関係を築き、手術で悩みを解消して笑顔で社会復帰してもらうのが治療の目的です。このため、形成外科医は「精神外科医」とも呼ばれるのです。どこの組織をどう移植し、再建するかということにおいて、さまざまな選択肢の中から患者さんにとってのベストを探すという、幅広い知識と同時に、アイデアやこだわりも試される分野です。
形成外科では、けがで失われた顔の部分をほかの部位から移植して治したり、乳がんなどで乳房を失った人に別組織を使って再建したりと、組織を移植して再建を行います。そして、このような組織を移植し定着させるために必要となるのが血管です。従来は筋肉を含めた比較的太い血管しか移植できなかったのが、技術の進歩もあり筋肉を含まない細い血管のみでも移植可能になっています。このようにできることの幅が広がることで、形成外科では、より多くの患者さんに対するケアが可能となってきているのです。
帝京大学 医学部 外科学講座 教授 佐野 圭二 先生
国立がん研究センターのがん登録・統計(2017年)によると、がんでの死亡率が高い部位の上位に肝臓と膵(すい)臓が入っています。男性では4位に肝臓、5位に膵臓が、女性では3位に膵臓が入っています。2014年の統計では男女とも膵臓がんは5位までに入っていませんでしたが、ここ10年で死亡者数が1.5倍にも増えているのです。これには、膵臓がん自体の発症者が増えていることに加え、膵臓がんは発見したときには病状がすでに進行していることが多く、根治が難しいという理由が挙げられます。
悪性腫瘍(がん)の治療は、化学療法(抗がん剤)、放射線療法、手術療法が3本柱で、最近では免疫療法も有効な手段と考えられています。
膵臓がんの治療は、切除可能な場合は患部を取り除く手術療法になりますが、手術前に抗がん剤を使うことで腫瘍を小さくしてから手術をすることができます。また、手術後にも抗がん剤を使い、肺など遠隔に飛んでいるかもしれないがん細胞をたたくことで、再発予防にもつながります。近年、がんの増殖スピードを抑える効果のある抗がん剤も登場し、再発までの期間が延びるなど治療成績が大きく向上しました。このように、局所療法である手術と全身療法である化学療法など、2つ以上の治療方法を組み合わせて治療を行うことを集学的治療と呼びます。
治すことが難しい膵臓がんを、早期に発見することはできないのでしょうか? 膵臓がんはある程度進行しないと自覚症状が出ない上に、検診を受ける全員にMRI(磁気共鳴画像)撮影を行うことは医療経済的に問題があり、早期発見が難しいのです。そのため現状では、膵臓がんが見つかった段階で治療にベストを尽くすことが大切です。今後、どういう場合に手術が適しているのかなどの研究が進めば、さらなる治療成績の向上が期待されます。
慶應義塾大学 医学部 内科学教室 循環器内科 教授 福田 恵一 先生
人間にとって最も重要な器官の一つである心臓には、医療が発達した現在においても、治すことが困難な病気があります。例えば、重症心不全を患った場合は心臓移植が必要になります。ただ、移植には心臓の提供者(ドナー)の問題など、難しい側面がたくさんあります。そこで研究が進められているのが、心臓の再生医療です。心筋細胞を人工的に培養し、傷んだ心臓に移植して再生することをめざした取り組みが、世界各国で行われています。
心臓の再生医療は、骨髄細胞の中にある幹細胞が心筋細胞に分化できると判明したことが最初の引き金となり、その後はES細胞(胚性幹細胞)などを用いた心筋の再生研究が進められてきました。現在では、2006年に開発されたiPS細胞(人工多能性幹細胞)が、心臓の再生医療の切り札として注目されています。iPS細胞には患者さん自身の細胞を基に作成できるというメリットがあり、今では1滴の血液さえあれば、以前よりも低コストで、かつ効率的にiPS細胞を作ることも可能になりました。そのiPS細胞が、どういう因子によって心筋細胞に分化していくのかというメカニズムも、明らかになってきています。
iPS細胞を心臓の再生医療に利用するためには、さまざまな課題をクリアする必要があります。例えば、iPS細胞から心筋細胞を作成しても、一部の細胞は分化しきれないでiPS細胞のまま残り、その状態で移植すると、残ったiPS細胞は奇形腫を作ってしまいます。この問題に対し、細胞ごとのエネルギーの使い方の違いを利用して、分化しきれなかったiPS細胞のみを死滅させる手法が開発されました。そのほか、実際の移植にまつわる課題なども、一つひとつ解決に向かっています。まったく新しい道を切り開いていく心臓の再生医療の研究は、病に苦しむ大勢の患者さんたちにとって、希望の光となっているのです。
大阪医科薬科大学 ※2021年4月大学統合予定 設置認可申請中 医学部 医学科 教授 鈴木 富雄 先生
「なんとなく体の調子が悪いから病院で診てもらいたいけど、何科に行けばいいのかわからない」ということは、ありませんか? 病院は専門の診療科目に分かれています。例えば「めまいがする」という症状なら、脳神経外科へ行けばいいのか、耳鼻科に行くべきか、それとも内科でいいのか、患者さんは迷います。
また高齢になると、患者さん1人が抱える症状は眼科、整形外科、内科、循環器科など複数の診療科目にわたるので、全部を日常的に受診するのは大変です。現在の医療・医学で使われている科目分けは、患者さんのニーズに合っているでしょうか?
そこで広まってきたのが「総合診療」という医療の考え方です。症状があるが、どこの何の病気かわからない患者さんを総合病院の「総合診療科」で診療したり、プライマリ・ケアの現場でよくみられる風邪・インフルエンザ・ケガなどの症状を診療所で幅広く診療したり、高齢者が訴えるさまざまな症状に訪問医療でトータルに対応したりといった「総合的な診療」を行うのが総合診療医です。総合診療医は、「この病気なら任せとけ!」という臓器別の専門医とは違い、「あなたの病気なら任せとけ!」という患者さん主体の立場で医療を行います。特定の臓器の専門的治療が必要な場合は、最適な臓器別専門医へとつなぎます。
また総合診療医は、ケガや病気、精神的な疾患など、さまざまな症状が発生する災害の現場でも活躍します。まるでアメーバのように柔軟に形を変えながら、その場のニーズに対応するのも総合診療医の役割です。その本質は、患者さんが抱えるすべての問題に向き合い、今できるベストの選択をすることです。
患者さんの症状だけでなく、その人の心理や社会的な環境までも含めて診療します。つまり、心臓外科医や精神科医のように「器官や病気の専門医」ではなく、総合診療医は「あなたの専門医」なのです。
徳島大学 医学部 医学科 消化器内科学分野 教授 髙山 哲治 先生
「胃がん・大腸がん・肺がん」は日本人の3大がんです。このことから消化管のがんが圧倒的に多く、発生する頻度も高いことがわかります。これらの診察には通常、内視鏡を使うのですが、特に大腸の診断には15%程度の見落としがあると言われており、高精度の診断方法が求められてきました。さらに、がんの大きさをどう評価するかという問題もあります。治療後にがんがどれくらい小さくなったかについても、CT(コンピュータ断層撮影)による検査では細胞が死んでいても大きさ自体はあまり縮小しないので、定量的に診る方法の確立も課題です。
2000年以降がん研究は飛躍的に進歩していますが、このように診断にもまだ課題があります。そこで、注目されているのが、診断や治療に光を使う方法です。
例えば、大腸がんでは、がん細胞が増えるメカニズムのひとつとして、がん細胞に特異的なタンパク質(EGFR:上皮成長因子受容体)が過剰に発現することがわかっています。そのEGFRを不活性化させる分子標的薬がすでに標準治療薬として実用化されています。この薬に蛍光物質をつけてEGFRと結合したら光るように設計した探索物質(蛍光プローブ)を使って、大腸内視鏡診断の精度を高めようというものです。感度を上げると、がんの大きさなどの状態を詳細に把握することも可能になります。そして、この研究は光を当ててがん細胞を死滅させるという治療法にもつながります。
現在のがん診断ではPET(陽電子放出断層撮影)やCTがよく用いられています。しかし少量とはいえ放射線を浴びることから、患者さんの負担を考えると回数にも限度があります。この課題解決にも光を使った診断や治療は新たな道筋をつけそうです。
新たな診断・治療法の研究はやはり3大がんに対するものが多いので先行していますが、光を使った技術が確立されると、次はほかのがん診断・治療への適用です。ここにも大きな期待が寄せられています。
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ダビンチなどのロボットを使えるのが楽しみだから。
同敷地内にある大学病院での実習を含め、大学一年生から医療に関した勉強ができる点
看護学部や薬学部などと合同で行う授業があり、チーム医療のをしっかり学べる。
歴史があり、研究も色々されていて、最先端の医療が勉強出来ると思ったからです。
MD/PhDコース、Student Labに魅力を感じた。
医学の分野の中でも、免疫に関する研究がさかんに行われていて興味をもったから。
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弘前大学 医学部
小児癌研究が強いから
研究も盛んでありCTの先駆けであったり、血便の検査法を確立し、多くの特許を取得しています。