グローバル化が進む中で、1つの国だけでは解決できない問題が起こっています。複雑に絡み合うこうした国際的諸問題を多角的な視点から研究するのが国際関係学。戦争や民族紛争、貿易問題などを通して国家間の政治経済関係や国際平和を追究する社会科学的アプローチと、異なる民族や地域の問題を国家・国境を超えて考える人文科学的アプローチがあります。
研究には、政治学、法学、経済学、史学、地理学、社会学などの知識が必要とされ、語学力も要求されます。その研究対象は、主権国家だけには限定されず、EUやASEANなどの国際共同体、国連などの国際機関、NGO、多国籍企業など広範囲に及びます。平和の構築や温暖化などの環境問題、多国間での貿易の枠組み作りや企業の海外進出の問題、多文化共生のあり方などテーマは多岐にわたります。
語学力や国際感覚を生かし、外資系企業、商社、金融・保険業、製造業、旅行会社、マスコミ関連など、就職先は多岐にわたります。また、NGOやシンクタンクでの国際貢献を希望する人、海外留学や大学院進学をする人も増えています。
秋田大学 国際資源学部 国際資源学科 資源政策コース 准教授 藍澤 淑雄 先生
世界には、アフリカなどの開発途上国を中心に、貧困下で生活している人がたくさんいます。国際機関、開発支援国、NGO、民間企業は、開発途上国に暮らす人々が主体となって国や地域を開発していくことをさまざまな形で支援しています。こうした支援は国際協力と呼ばれ、その支援は人材の能力向上、国や組織の制度強化、橋や道路などのインフラ整備まで多岐にわたります。
世界中の誰もが同時に便益を受けることができる有形、無形の財のことを「国際公共財」と言います。国際協力が、もし世界中で暮らす人たち皆を同時に平和で豊かにできるのならば、それは国際公共財であると言ってよいでしょう。
ただ実際の国際社会では、国際協力に対する考え方には違いがあり、支援する国と支援を受ける国との関係性も異なります。各国が国益を抱えながら、自国にもメリットがあるよう協力関係を築いているという側面もあります。このように多くの国が国益重視の国際協力を続ける限り、誰もが同時に便益を受けることは困難なので、国際協力は純粋な国際公共財にはなりえないとも言えます。
しかし、グローバル化が進むにつれて、世界は確実に相互に依存する度合いが高まってきています。仮に世界各国が互いに支え合っていかなければ生き抜けないのだとすれば、世界中の国々が歩み寄り、世界全体が平和で豊かになることを共通の目標にしなければなりません。
国際協力の国際公共財としての役割は、まさにここに求められるわけです。ただ国によってどのくらい豊かで平和かは異なります。比較的豊かな国とそうでない国は同じように国際社会には貢献できないでしょう。それぞれの国が置かれた状況を十分に理解し、世界中の人々が幸せな生活を送れるような仕組みを考えていく必要があります。
専修大学 経済学部 国際経済学科 教授 狐崎 知己 先生
グローバル化が経済に及ぼす影響について、自由貿易が進んだことをメリットと感じる人がいる一方、競争相手が増えて雇用が奪われるなどのデメリットを指摘する人もいます。1988年から2008年までの約20年間で、世界の人の所得がどれぐらい伸びたかを所得層別に示したグラフがあります。この約20年間は冷戦終結後、グローバル化が進んだ時期と重なるため、伸び率の大小によってグローバル化の恩恵を受けた所得層と、そうではない所得層がわかるのです。
このグラフは、その形から「エレファントグラフ」と呼ばれています。つまり、グローバル化の恩恵を受けていたのは、先進国に住む最も所得が高い「スーパーリッチ」の層と、中国やインドなど人口規模が多い国に住み、かつては経済的に貧しいとされた層の人たちでした。一方、先進国に住んでいても中間層から下に位置する人たちや、世界の最貧層の人たちは所得の伸びに大きな増加が見られません。先進国にいながらグローバル化の恩恵を受けていないことを、急成長しているほかの国のせいだと考える人もいますが、経済学的な分析では問題はむしろ国内での所得格差が広がっていることにある、とする見方が優勢です。
国際経済学の関心は、グローバル化の恩恵から取り残された世界の最貧層の人たちに、どのような支援・協力ができるかにあります。先進国で下層の人は、貧しい国で暮らす人よりは、はるかに豊かな生活ができています。それは生まれながらの特権だということを先進国の人は認識し、開発途上国の最貧層の人々を支援することが大事です。
経済学は、限られた資源を最も効率的かつ効果的に配分するにはどうすればよいかを考える学問です。国際支援においても同様で、現地の文化や価値観をよく理解したうえで、保健医療や教育面での支援も含め、効果的な資源配分を考えていく必要があります。
フェリス女学院大学 国際交流学部 国際交流学科 准教授 杉之原 真子 先生
国際関係論の大きなテーマとして「戦争と平和」の問題が挙げられます。国同士の関係を考え、どうすれば戦争を未然に防ぐことができるかを理論的かつ現実的に研究します。遠い海外の国で戦争や経済危機が起こったら、私たちの生活にどんな影響があるのでしょうか? 例えば、食品や原油などの、いわゆる一次産品の価格が上昇すると、日本で売られている商品の価格にも大きな影響が出ます。グローバル化が進む時代において、国際関係論は私たちの生活とも密接に結びついているのです。
今や生活必需品ともいえるスマートフォンは、グローバルな生産網の中で作られています。iPhoneはアメリカのアップル社の製品ですが、本体や内部の部品は主に中国や台湾、日本、韓国などで作られています。さらに、それらの部品の原材料は世界中から調達されています。つまり、ひとつの国だけで製造されているわけではないのです。アメリカと中国が貿易について交渉するニュースを見てもピンとこないかもしれませんが、その結果が身近なスマホの生産と価格に大きな影響を与えることになるのです。
あなたも持っているであろう、ファストファッションの洋服を生産しているのは、アジアなどの国々の低賃金労働者です。日本で1日のアルバイトで稼げる額と1カ月の給料が同じといった国も世界にはまだあります。安くておしゃれな洋服は、グローバルな貧富の差を生む国際経済の仕組みの中で作られているのです。
それでも、これまで貧しかった国が縫製業の発展により経済成長したり、労働者が現金収入を得られるようになったり、という側面もあります。しかし、グローバル化によって国が豊かで便利になる一方で、国内の格差の問題や労働問題といった負の側面も生まれているのです。国際関係論を学ぶということは、世界の今の流れを多面的に理解することにつながります。
名古屋市立大学 人文社会学部 現代社会学科 教授 伊藤 恭彦 先生
正義とは、簡単に要約すると「人と人との関係が正しく取り結ばれていること」です。世界を見ると、8億人以上が飢餓に苦しんでいる一方で、先進国を中心に年間約13億トンの食料が廃棄されています。たまたま貧しい国に生まれた人は貧しい生活を強いられ、豊かな国に生まれた人は富を享受しています。国際社会の仕組みを通じて利益や不利益が生まれる、歪んだ関係ともいえるでしょう。
これを是正するために、貧困や飢餓をなくすことなどを目的とするSDGs(持続可能な開発目標)が国連サミットで採択され、国際社会がこれに取り組もうとしています。
さらに今、国際社会で注目されているのが、「タックスヘイブン(租税回避地)」の問題です。大手企業や裕福な人が自国への納税から逃れるために、法人税や所得税などの税率がゼロか極めて低い国へと資金を移動しているのです。タックスヘイブンによる日本の税収の損失は、5兆円にのぼるといわれ、消費税2%分ほどに相当します。庶民や中小企業は税金から逃れられずに正直に払っているのに、富裕層や大手企業の一部は税逃れをしているのが現実で、一部の裕福な人ほど有利になる社会なのです。
こうした税源浸食と利益移転の問題を解消すべく、国際社会は「BEPS(ベップス)プロジェクト」を立ち上げて、対応しようとしています。これにより、資金を貧困や飢餓を抱える国への支援に使うことも可能になります。
国際的な課題は、これに限りません。例えば、利益を生む先進国の医療技術や医薬品の開発は積極的に行われますが、利益にならないアフリカの風土病には目も向けられていません。先進国が地球環境を汚染し、貧しい国が被害を受ける構造もそのひとつです。こうした、国境を超えた「人と人との関係」が正しくあるために、問題を解決するグローバルガバナンスがますます重要な時代となっています。
神戸市外国語大学 外国語学部 中国学科 教授 櫻井 次郎 先生
中国とはいったい、どんな国なのでしょうか? それを知る一つの手がかりに、環境や公害の問題があります。日本にも影響を及ぼすPM2.5や黄砂などはよく知られていますが、ほかにも、廃鉱山から出る重金属に含まれる有害物質が地域住民に甚大な健康被害をもたらしているという深刻な事例なども多くあります。環境や公害に対してどのような対策がとられ、実際にその効果がどれだけ出ているのかを知ることは、経済発展を優先してきた中国の今後を考える上で、大きなヒントになります。
しかし、中国には裁判にさえならない環境や公害の問題も存在し、文献や資料になっていないものも多いのが現状です。中国の実態を正確に把握するには、実際に現地に行き、中国語を使って直接調査する必要があります。あなたの知っている北京や上海とは全く違う、別の中国の顔がそこにあります。
今、中国で起きていることは、これから経済発展していくアフリカ諸国でも起こる可能性があります。中国で効果があった環境法や環境システムがあれば、それが役立つことになります。つまりそれは、将来の世界のリスクを少しでも減らすことにもつながるのです。
日系企業も多く進出している中国の経済発展が今後も順調に進むかどうかは、環境・公害問題と深く関係しています。環境破壊や公害を防ぐための政策は、経済発展にブレーキをかける恐れもあるからです。環境政策の制約を考慮した上で、経済成長するための戦略を立てる必要があります。そのためにも、表に出てこない問題も含めて、等身大の中国を理解しておくことは重要です。
しかし、中国の環境悪化や公害の流れを止めるには、ほかにも大切なことがあります。それは、日本や欧米諸国が、環境や公害に対する対策をきちんと行いながらも、経済発展を遂げる、魅力的なモデル国になることです。
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自分が研究したい分野に精通している先生がいるため。
ディスカッションなどの、意見を発表する場を多く設けているため、自分が興味のあることを学びながら、自分の意見をみんなに伝える力がつくと思ったから。
教育カリキュラムの豊富さ。充実した留学制度。
外国語学習に力を入れており、将来に外国語を活かした仕事が出来ると思いました。
異文化理解、観光学について学びたかったから。
法律や経済、社会学など、広く学習できるから
少人数で内容の濃い授業が行われている。模擬国際連合に興味があった。
外国語だけでなく、経済・商業についても学ぶことができる。また、周囲の大学との単位互換授業により様々な科目を学べる。
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秋田大学 国際資源学部
国内で唯一の国際資源学部があり、資源学を専門的に学ぶ上で教授はカリキュラムを含めとても良い環境が整っている。
資源開発に興味があり、秋田鉱山専門学校からの伝統と実績による世界最先端技術を学びたいと考えたため。