観光学では、「現代における観光の役割」「観光地での地域文化との触れ合い」「ホスピタリティの重要性」など、観光と関わりをもつ社会現象に関連する研究を行います。観光を地理学、経済学、社会学、人類学などさまざまな学際的見地からとらえ、豊かな観光文化を築くための探究をすることにより、観光産業に関連する諸問題の解決にあたります。
具体的には、「観光文化や観光行動に関する分析や研究をする分野」「観光地の開発や観光地の運営を地域発展に生かす研究をする分野」「ホテルやレジャー施設、テーマパークといった観光関連施設や企業の研究をする分野」などがあります。文化としての観光という側面だけではなく、産業としての観光についても研究対象としています。また、理論だけではなく、観光業に必要となる語学や実務や技能についても学びます。
ツアーコンダクター、ツアープランナーなどの観光・旅行業界やホテルスタッフ、コンシェルジュといったホテル業界、テーマパーク、アウトドア、レジャー・スポーツ関連など、サービス業界全般で活躍する人が大半です。
帝京平成大学 現代ライフ学部 観光経営学科 教授 境 健 先生
「次はどこに行こうか」と旅行パンフレットを見ると、複数の都市を回る「周遊プラン」が目にとまるはずです。さまざまな場所を観光できるので、一見するとお得に感じますが、移動時間が多過ぎて滞在時間が短いという場合もあります。良いプランを見つけるには、移動手段や滞在時間などもチェックするのが安心です。より多くの人々が観光地を訪れ、どういう旅行プランを企画するとお客さんに満足してもらえるか経営の視点でとらえるのが「観光経営学」という学びです。
旅行業とは、時間や体験を商品として提供するビジネスです。そのため、日常では味わえない感動やサプライズが体験できなければ、その旅行プランの満足度は低くなり、次の購入にはつながりません。逆に言うと、そこでしか体験できない独自性のある企画であれば満足度は高くなり、次の購入につなげることができるのです。
例えば、社交ダンスクラブの会員には、オーストリア・ウィーンの豪華な宮殿で「舞踏会付きのプラン」を提案したり、呉服店の従業員やお客さんには、船内で和服を着用することも多い「クルーズ旅行」を提案するなど、お客さんが何を求めているのかなどを敏感にキャッチし、お客さんの期待を超える商品を企画することが重要です。
これまでの「個人」を相手にした観光ビジネスから、成長分野である、研修や会議、展示会に付属する旅行を扱う「MICE(マイス)事業」に力を入れる旅行会社が増えています。その理由は、一度に多くの人が動き、輸送・交通や宿泊なども必要で、安定したニーズがあるからです。
また、旅行会社自らが会議やイベントなどの企画や運営を行ったり、イベント会社や広告会社と連携し、コーディネーターとして旅行を統括することも増えてきています。観光立国をめざす日本の注目度は高まっており、今後はMICE事業の拡大も期待されています。
長野大学 環境ツーリズム学部 環境ツーリズム学科 教授 熊谷 圭介 先生
スキー人口は、1990年頃をピークとし、昨今は半分以下に減っています。例えば、長野県飯山(いいやま)市には、かつてスキー場が10カ所程度ありましたが、今は3分の1ほどです。スキーを目的とした宿泊施設も経営的に厳しくなっています。そこで冬の観光から、春・夏・秋グリーンシーズンの観光への転換が求められています。これはウィンタースポーツを観光の目玉としてきた長野県の観光地やリゾート地全体に共通する課題です。
こうした課題やその解決方法を考えるには、実際に過疎や高齢化が進む地域に行き、地元の人と交流を深め、現場で問題を把握することが重要です。観光施設経営者や、移住してきた人などからいろいろな話を聞けば、その取り組みを知ることができます。その中で多様な生き方や生活に触れることも大切です。そうすることで、エコツーリズムや地域の暮らし、文化を生かした観光プログラムを提案できます。
また、あまり知られていませんが、魅力的な風景や見晴らしのよいスペースを、もっと観光に活用するためのアイデアを出し合ったりもします。模型を使って既存の施設と周囲の景観を生かした新たな開発計画を三次元で考えることで、より具体的に検討できます。
膨大な予算が必要な案は、なかなか実現できませんが、地域での社会実験や地域住民による景観づくりなどはすぐに実行に移せます。アイデアを出すだけではなく、説得力を持ってプランニングし、提案できるかどうかが大切なのです。地域の住民と協力して実現に向けたプロセスを考えていきます。
地域の活性化を考えるためには、旅に出ることもいい経験になります。ヨーロッパでは若者が長期間、旅に出ることは一般的です。なぜなら、旅は風景を見たり食事を楽しんだりするだけでなく、人生を豊かにしてくれるからです。いろいろな経験を積み、人生を考える時間を持つことも旅の役割です。旅が新しい視点をもたらしてくれるのです。
京都外国語大学 国際貢献学部 グローバル観光学科 准教授 エリック ハーキンソン 先生
観光とICT(情報通信技術)の研究にVR(Virtual Reality、仮想現実)やAR(Augmented Reality、拡張現実)の考え方が入ってきています。VRは、スクリーンの中で現実感のある視覚映像をつくり出す技術です。対してARは、実際の風景にバーチャルの視覚情報を重ねて表示することで、文字通り、目の前の世界を仮想的に拡張するもので、デジタルコンテンツがあなたの世界にやって来るイメージです。例えば、いろいろな場所に出現するキャラクターを捕まえるゲームは、AR技術を応用した例です。
金閣寺を訪れた外国人観光客が「もっと金閣寺を知りたい」と思ったとします。そこで自分のスマートフォンに指定のアプリを設定し、あらかじめ用意されたカードにかざせば、すぐホームページを見ることができます。また音声案内が聞きたい人は、その音声が聞けるカードにかざすと、彼らの母語で案内が流れます。
次のステップとして、観光客の誘導という問題があります。それにはゲームの要素を盛り込んだゲームラリーというアイデアがあり、この中では、動画コンテンツを使ってスポットごとにその土地の歴史やゆかりのある人物の情報を提供します。ラリー参加者の「もっと知りたい」という意欲をかき立てるよう、うまく情報を小出しにするのがポイントです。デジタルコンテンツとカードを組み合わせることで、その土地を楽しく巡り、学びながらゴールに導く仕組みです。
観光に、これからますます必要なのは「経験」です。旅行者は、今までのようにただ移動し、案内板を見て巡る観光では満足しません。求めているのは自ら体験し、発見するという主体的な観光です。そのためにはいろいろな人の、たくさんのアイデアが必要です。枠組みさえつくることができれば、アイデア次第で観光の内容は無限に広がるのです。
奈良県立大学 地域創造学部 地域創造学科 教授 新井 直樹 先生
2018年、インバウンド(訪日外国人旅行者)が年間3千万人を突破しました。2012年に初めて1千万人を超えてから6年で3倍に急増しました。少子高齢化にともなう人口減少で国内の市場が低迷する中、ほかの産業では例を見ないほど規模の拡大が続いているのは、インバウンド観光市場です。
日本の自然文化、食事などの観光資源が評価されていることはさることながら、国内の事情だけではこんなに短期間で急増しません。何が一番変わったかと言えば、近隣のアジア諸国が経済発展して国民所得が向上し、訪日旅行需要が拡大したことです。もちろん、これに合わせて政府もビザ免除、免税措置、LCCの拡充といった規制緩和策などで対応しています。ほかにも円安や日中関係の改善など、さまざまな要因があります。
国内日本人観光は、内需の移動ですが、外需を獲得するインバウンド観光は「見えざる輸出」と呼ばれ、国の経済成長に寄与します。2018年のインバウンド消費は、4兆5千億円に達し、自動車部品、電子部品の輸出を上回ります。
また製造業と違って旅行消費は、買い物、宿泊、飲食、交通、娯楽など幅広い分野に波及します。さらに訪日旅行をきっかけに、その後も日本製品を越境ECで購入し、化粧品や食品などの輸出が伸びるなど、インバウンドの経済効果は大きいです。また、訪日旅行の前後で、対日世論が厳しいとされる中国人、韓国人旅行者の日本に対する印象が、悪いから良いに大幅に変わるなど、社会的な意義や効果も大きいです。
しかしインバウンドの増加は、同時に課題も生み出しています。インバウンドの消費額は、東京、大阪、北海道、京都などの大都市や特定地域に集中し、多くの地方がその恩恵を受けていません。逆に京都では外国人観光客が増えすぎて生活環境が悪化するなど「観光公害」の問題が発生しています。このように、観光学とはさまざまな因果関係から現象や問題を解明する、学際的な研究なのです。
和歌山大学 観光学部 観光学科 准教授 伊藤 央二 先生
2019年のラグビーワールドカップ、2020年の東京オリンピック・パラリンピック、2021年のワールドマスターズゲームズ関西と、日本のスポーツイベントは大きな盛り上がりを見せています。旅行者の行動やその影響に注目して研究するのが観光学ですが、その中でも「スポーツ」に関連した参加者の観光行動や参加行動、そしてそれらが社会に与える影響に着目し調査研究するのがスポーツツーリズムです。参加者は旅自体をもっと楽しくするためにイベント以外の観光もしたいと考えています。それを行動科学・社会学・文化心理学などを基に読み解いていきます。
地域の人と学生が一緒になって、海外からのスポーツツーリストに魅力的に見える日帰り旅行のプランをつくる、地域の人たちが観光客を案内するなど、観光客の行動を分析し、自治体や企業との連携を通して地域活性化につなげる動きがあります。地域の人や学生は、地元を案内するためにはきちんと勉強することが必要ですが、それが地元の魅力の再発見・再認識につながります。また、外国からの参加者からは観光消費や国際交流もうまれます。スポーツツーリズムは、地域の人たちにも幸せな状況をつくる大きな可能性を秘めています。
以前スポーツは、それ自体が一番の目的ととらえられていましたが、現在のスポーツツーリズムは「スポーツが目的のひとつとして含まれる旅行」と幅広くとらえられています。旅行をしたらちょうどスポーツイベントがあったから参加する、甲子園球場に行ったら野球博物館があったから見学するなど、観光目的の一番がスポーツそのものでなくてもよいという考え方です。このようにスポーツツーリズムのとらえ方が広がるにつれ、例えば「VRや360度スクリーンを使用してリアルな映像を見ると本当に旅行した気分になるか」などを測定する研究も行われています。このようにスポーツツーリズムの世界は日々進歩しているのです。
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地産地消について学びたい自分にとって、フィールドワークが多いこの大学は自分にとって最適でした。
環境ツーリズム学部のゼミナール学習の中に自分が学びたいものがあった。
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観光学と英語を学びたかったので、京都外国語大学の国際貢献学部グローバル観光学科を選択しました。
授業がオールイングリッシュ、ビジネスコースがとれる
奈良県の歴史的な建物や名所などを利用し、観光に関する情報を学べるから。
観光地としての魅力が多い奈良という地を活かし、地域活性化について学ぶことができるため。
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将来は海外で働きたいと考えていたので、英語で授業が受けられる点や、充実した留学のシステムなどもとても魅力的でした。
国立大学唯一の観光学部というところにも惹かれました。観光学部では、GIPやLIPといった活動もあり、さまざまな経験ができると思います。
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高崎経済大学 地域政策学部
地域の観光マーケティングについて研究できるので。
地域政策学部は、法律についても学ぶとのことなので、自分の希望に近い学部として決めました。