超高齢化・少子化・格差の拡大が進む日本において、重要性の高まる福祉について理論と実践をトータルに学ぶのが社会福祉学。荒廃した地域社会の再建や都市社会の環境整備、医療福祉制度や法律の整備、具体的なソーシャルサービスから社会全体を視野に入れた理論まで、政治、法律、社会、医療などの側面から幅広く研究します。
具体的には、老人福祉、障がい者福祉、児童福祉といった視点から、すべての人が人間らしく生きるための方法や社会制度のあり方について学んでいきます。社会福祉の理論を学ぶだけではなく、社会福祉士や精神保健福祉士などのソーシャルワーカーや、介護福祉士、ケアマネジャーなどの資格をとって、社会的な弱者を支えていく人材を育成します。
多くの人が、ソーシャルワーカーや公的機関の職員など、福祉の現場での仕事を志望します。また、社会福祉士や介護福祉士の受験資格を取得し、国家試験に合格すれば、福祉事務所や児童相談所、老人介護施設などの社会福祉施設で活躍できます。
立正大学 社会福祉学部 社会福祉学科 教授 安達 映子 先生
「ソーシャルワーカー」とは、一般的には社会福祉士の国家資格を持ち、人々が生活していく上で出会う問題や課題を解決するための援助を行う専門職です。困りごとを抱え、社会の中で弱い立場にいる人たちが幸せに暮らせるように、相談にのり、必要な社会福祉サービスを組み合わせ、周囲や地域の人々との連携と調整を図ります。
比較的新しくできた職業ですが、福祉職の公務員として自治体に勤めるのをはじめ、病気で困っている人をサポートするために病院に勤務する「医療ソーシャルワーカー」や、学校で児童生徒の相談にのる「スクールソーシャルワーカー」など、活躍の場は広がっています。
子どもの貧困や虐待が社会問題化するなかで、家族という単位に目を向けた「家族ソーシャルワーク」が、今後重要になってくると考えられています。例えば不登校の子どもがいたとして、その原因が母子家庭で母親が働いている間は弟妹の面倒を見なくてはならないというケースの場合、心の悩みを聞くだけでは問題は解決しません。ソーシャルワーカーはヘルパーの手配、場合によっては生活保護の申請など社会資源も活用しながら、具体的な解決をめざします。その際、家族という「関係」、家族間のコミュニケーションに着目することも大事になります。家族間の関係性をとらえ直し調整することで、より望ましい状態を実現していくことが必要なのです。
支援を必要とする人々とのコミュニケーションによって、浮かび上がってくる一人ひとりの物語を尊重することも大切です。人は社会的によいとされる「こういう人生が立派である」とか、「こんな家族が理想的である」といった物語に影響され、そこから外れた人生は不幸だと思いがちです。しかし、大事なのはかけがえのない生き生きとした、「自分自身の物語を描き、生きること」です。それができるように物語をともに書いていくのもソーシャルワーカーの役割なのです。
長野大学 社会福祉学部 社会福祉学科 教授 鈴木 忠義 先生
1990年代半ば、メディアの影響などによりホームレスは社会問題として注目を浴びるようになりました。2000年代に入って国レベルで対策がとられていきます。それまでは新宿西口地下にあった「ダンボール村」のように集団生活をしていましたが、行政からの排除によって移動させられ、居場所を失った人も少なくありません。駅や公園などでホームレスを目にする機会は減りましたが、全く居なくなったというわけではなく、今は単独もしくは数人単位で人目につかないように暮らしているケースも多くなりました。
ホームレス以外にも、貧困にはさまざまな形があります。いわゆる「ネットカフェ難民」も屋根のある場所で寝泊まりしてはいますが、生活の苦しさはホームレスと大差はないでしょう。また、地方に目を移すと、一応の住まいはあるものの、経済的困窮とともに社会的なつながりを失っている人が一定数います。全国各地にフードバンクがつくられるようになったのには、こうした背景も一因としてあります。フードバンクは今日明日の食事に困るなど生活に困窮している人々に食料を提供する活動ですが、社会とのつながりを取り戻すきっかけをつくる支援とも考えられます。
厚生労働省の「ホームレスの実態に関する全国調査」(2017年)によると、3分の1以上のホームレスが今後の希望について「今のままでよい」と回答しています。しかし今の生活に満足しているわけではなく、仕方なく受容しているのです。仮に就職が決まる、あるいは生活保護を受給するなどして収入を手にしても、社会復帰したとは言えません。地域の集まりや近所付き合いなど、地域生活を取り戻すには多くのハードルがあります。この道のりの困難さが諦めへとつながっていると考えられます。貧困を解決するには、社会保障制度を利用しやすくするとともに生活に困窮する人々を排除しない地域づくりが求められています。
大阪人間科学大学 人間科学部 社会福祉学科 准教授 石川 久仁子 先生
地域福祉とは、誰もが自分らしく暮らす状態を可能とする地域社会をつくろうとする学問です。日本国憲法は第13条で幸福追求権、第25条で生存権の保障をうたっています。しかし、残念ながら日本社会においては外国人に対するヘイトスピーチや障がい者や生活保護受給者へのバッシングが後を絶たず、高齢者や障がい者、外国人、LGBTなどの社会的立場が弱いマイノリティが生きづらい社会となっています。
ダイバーシティ(多様性)という考え方が近年注目されつつあります。ダイバーシティとは、民族といった文化的背景、障がい、性的指向、宗教など人や集団、地域の違いに相互が気づき、理解・尊重し、社会的不利な状態や相互の対立を解消していこうとする思想です。
では具体的には多様性が尊重されるためには何が必要でしょうか。まずは、介護や就労支援などその人の特性に合わせた生活支援が必要です。福祉施設、公園などのコミュニティ施設整備も子どもから高齢者まですべての人の幸せに貢献します。しかし、最も大切で、難しいのが人々の意識、違いを認め合う人と人とのつながりづくりです。
いま、人と人とのつながりそのものが弱くなっています。人と人とのつながりが豊かな地域には多くのグループが存在します。町内会や子ども会、スポーツクラブなど地域の集まりを見直す必要があるでしょう。ボランティアグループやNPO活動の活発化も必要です。お茶会など気軽なイベントが互いを理解するきっかけになります。また、本人同士が集まる場も大切です。
地域福祉は行動の学問でもあります。地域は時に少数者を排除しかねない排他性も兼ね備えています。誰もが自分らしく暮らせる社会づくりには専門職の力が重要です。互いの違いを尊重しながら、時に必要な生活支援を行いながら、問題解決にむけて互いが協力しあうためにどのようなコーディネートが必要なのか、福祉専門職の力量が問われています。
桃山学院大学 社会学部 社会学科 准教授 白波瀬 達也 先生
世界有数のGDP(国内総生産)を誇る日本にも、貧困問題は存在します。1990年代以降、国民の間に格差が広がり、2018年現在の相対的貧困率は約16%に及びます。単純な労働が求められる仕事はどんどん海外に流出し、現在はある程度の学歴がないと平均的な収入を得ることや、結婚して家庭を持つことが難しくなっています。
30~40代の働き盛りの男性にも非正規雇用が多いため、結婚して子どもをつくっても教育にお金がかけられず、その子どもも良い仕事に就けない、という格差の世代的再生産が社会問題化しています。
日本型の貧困は、個々の家庭に委ねられすぎている点が特徴です。本来は地域の協力があってしかるべきですが、現状では貧しい人を排除したり、ほかの地域に押し付けたりするような傾向があります。
大阪府にある「あいりん地区」には、さまざまな事情で行き場を失った人々が多く集まります。かつてのあいりん地区は建設現場などで働く日雇い労働者の街でしたが、景気の悪化や産業構造の変化によって日雇いの仕事も減り、現在は高齢者や、さまざまな理由で働けない人たちが生活保護を受け、炊き出しをはじめとする福祉サポートを受けながら暮らす地域へと変わっています。
日本の経済停滞や高齢化、弱者に対する接し方など、多くの問題が生み出したとも言えるあいりん地区の現状ですが、その中では実にポジティブな取り組みも行われています。日々発生する多くの問題に対して、自治体や市民団体、地域住民らが協力してさまざまなサポートを行っており、ほかの地域には見られない先進的な社会支援策が実践されているのです。このような取り組み、あるいは彼らを取り巻く特殊な状況を生んだ背景は、統計データに表れない部分も多くあります。地域の中に入り込み、当事者たちと関係性を築きながら間近で観察する「フィールドワーク」を通してこそ、内部のリアリティを知ることができるのです。
福山市立大学 教育学部 児童教育学科 准教授 野口 啓示 先生
近年、児童虐待による痛ましいニュースを聞くことは珍しくありません。これにはいくつか理由があります。まず、2000年に児童虐待防止法が施行され、「民事不介入」の原則が修正されて、「虐待を受けたと思われる」状態で児童相談所が家庭に介入できるようになったことが挙げられます。また子どもの人権についての意識が高まり、児童虐待が与える心身のダメージが大人になっても消えないという、深刻さに対する認識が広まってきたことも挙げられるでしょう。
児童虐待が認められた場合、多くの保護者は「しつけをしようと思った」と言います。そこにあるのは親子関係の悪循環(バッドサイクル)です。つまり最初は小さなものだった子どもの問題行動で、保護者はイライラして自制心を失い、「しつけ」という名の暴力をふるいます。暴力は一時的に子どもをコントロールできますが、長い目で見れば関係悪化は避けられません。保護者と子どもとのコミュニケーションは質量ともに低下し、子どもはさらなる問題行動を起こし、暴力も……、というサイクルです。そこで社会福祉サービスの調整を担う国家資格を持つソーシャルワーカーは、保護者にしつけやコミュニケーションを教える「ペアレントトレーニング」を行うことになります。
また保護者から子どもを引き離した方がよい場合もあり、児童養護施設や里親制度を使うこともあります。もちろん保護者から離れた子どもは心身ともにダメージがあるためケアが必要です。あえて問題行動を起こす「試し行動」が激しく、養育するのが困難な場合もあります。そこで、育てる側・育てられる側双方の思いを聞き、環境面での改善をはかるなど、具体的な問題解決を通して望ましい状態を実現していくソーシャルワーカーの仕事が重要になります。起こった現象に対処するだけでなく、それが起こる原因となっている人同士の関係性をひもとくことが求められるのです。
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福祉の視点から教育を学べるから。障害のある学生が多く在籍しているため、交流できると思ったから。
人の心の動きを理解するための方法が学べる心理学を一年次から学ぶことができます。そして、2年次からは県内の福祉施設で相談援助の実習ができる
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取りたい資格が取れる。国家資格の合格率が高い。
資格取得にかなり力を入れている所。
社会福祉士と介護福祉士の2つの国家試験の受験資格が取得できるから
クラブ、ボランティア活動が盛んで在学生、教授ともに協力して活動されているのを見て
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保育実習の時間が多く取られており、近くに附属の幼稚園もあるので、実際に現場で沢山経験を積めることに魅力を感じました。
保育科があり、保育士資格と幼稚園教諭資格が取得できるから
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岩手大学 人文社会科学部
地域政策課程で、フィールドワークなどを交えながら、リアリティのある学びができる
人文社会科学部は多くの分野を学習できるので魅力的だったから。