「教育」という学問は、学校教員の養成だけではなく、学校・職場など社会全体から個人におよぶまで、あらゆる場面での教育のメカニズムのあり方を学び研究する学問で、「教育学」「教員養成」「総合科学課程」の3つに大別されています。
「教育学」は、人間の発達や教育制度、教育政策、教育環境など、教育のあり方について学ぶとともに、学校教育の諸問題と解決方法も研究対象となります。「教員養成」は、学校教員になることを主目的とし、教員免許の取得に必要な科目を中心に、生徒指導のための専門知識や技術を学びます。「総合科学課程」は、教員免許の取得にこだわらず、その時代の社会の要請に応え、生涯教育・情報化・国際化・人間科学・文化・芸術・スポーツなど幅広い分野の教育を総合的に研究する学問で、大学の専攻・課程も多岐にわたります。
幼稚園や小・中・高等学校などの教員になる人が大半ですが、公務員や図書館司書、学芸員になる人や、塾・予備校などの教育産業だけでなく、金融・保険関係、サービス業などの一般企業に就職する人もいます。
筑波大学 人間系 教授 大谷 奨 先生
「教育」というと学校をイメージするかもしれませんが、教育学は哲学を源流にもち、「よく生きるためにどうしたらいいか」を考える学問です。ですから、必ずしも学校だけが研究対象とは限りません。例えば、風邪をひいて病院に行って「今日は暖かくして早く寝なさい」と言われれば、大概の人はそうするでしょう。これもひとつの教育なのです。
とはいえ、学校はここ200年ほどの間、効率のいい教育システムを実践する場としてできあがってきたので、教育学は長い間学校を主たる研究対象としてきました。
高校は、国が定めた学習指導要領に沿って、授業のカリキュラムを組みます。さらに、大学進学者が多いかどうかなど、どういう生徒に教えるかによっても授業の組み立てを考えます。しかし試験対策ばかりでは、例えば数学の美しさは伝わりません。担当の教科に深い関心を寄せている先生ほど、このように、受験勉強以外に伝えたいものをもっていて、それを伝えるためにいろいろな方法を考えています。
授業がわかりやすい先生とそうでない先生がいるとしたら、なぜわかりやすいのか、反対になぜわかりにくいのか、そしてどう教えたらわかりやすくなるのかを考えてみることが、教育方法の研究につながっていきます。
教育学では、1990年代から生涯学習というテーマが取り上げられるようになりました。教育は学校教育では終わらないという考えが広まったためです。
生涯学習で重要なのが「自己教育力」です。自己教育力とは、わからないことがあったらすぐに調べたり人に聞いたりして疑問を解消する力です。自己教育力の高い人にとって、「わからない」という状態は居心地が悪いのです。好きなことでも仕事でも、自己教育力は重要です。
このように、どこにでも教育はあるのです。それを歴史や心理学、社会学などさまざまな学問の手法を使って研究するのが教育学なのです。
白鴎大学 教育学部 発達科学科 准教授 森 好紳 先生
新学習指導要領により、従来は小学校高学年で行われていた外国語活動が中学年に前倒しされ、高学年では教科として外国語科が実施されます。しかし、英語教育が早期化したからといって、これまで中学生に教えていた内容や方法を、そのまま小学生に当てはめればいいとは限らず、子どもの発達段階に合わせた指導が必要になります。例えば、小学生は中学生と異なり、物事の細部を分析的にとらえるより、全体としてとらえる傾向にあります。また、視覚や聴覚を刺激したり、体を動かしたりするなど、体験的に学んでもらうことが有効だと考えられます。
外国語を学ぶとき、単語一つひとつは理解できても、話の全体像を理解できなければ、コミュニケーションに支障をきたす場合もあります。まとまりのある話を理解するためには、一つひとつの単語の意味を理解した上で、それらをつなげて話の流れを理解する能力が必要です。このように、第二言語学習者の頭の中でどのようなプロセスが起きているのかを分析し、それを基にどうすれば適切な指導ができるかを考えるのが、「教育言語学」という学問です。
教育言語学は「応用言語学」と呼ばれる領域の一つで、関連領域の知見も活用しながら、言語学の知見を教育に応用する分野です。例えば、言語学で得られた知見に、認知科学や心理学などの知見を組み合わせて、第二言語習得に生かしていきます。言語の習得状況を研究する方法としては、ペーパーテストだけでなく、英語を処理する際の時間を計る、視線の動きを分析する、脳波を調べるなど、さまざまな手法が使われます。
こうした調査から、英語教育の現場に役立つ示唆を導き出すことが期待されます。例えば、まとまりのある話の概要を把握してもらう場合、細部だけでなく全体に目を向けさせることが大切です。そのためには、「あとで話の内容を友だちに伝えられるようにしましょう」と指導するなど、「活動の目的」を明確にすることが大切です。
共栄大学 教育学部 教育学科 教授 光野 公司郎 先生
かつて歴史の授業では、例えば「平安京に遷都したのは何年ですか」という問題に「794年」と答えることが求められてきました。しかし、現在の小学校では、単に出来事と年号を覚える歴史学習は重視されなくなりました。今、重視されているのは、その時代にどういう流れで世の中が動いたか、歴史を現代に生かせる部分はあるか、という観点です。
ブロック遊びを想像してみましょう。ブロックのピースをたくさん集めただけでは、何かの形にはなりません。それを組み上げてはじめて、車や家などの形を成すことができます。
幼稚園から高校までの教育カリキュラムの基準を記した学習指導要領は、2017年に改訂されました。小学校の学習指導要領は、学習指導と生徒指導によって「生きる力」を育むことを主眼としています。学習指導においては、ただ知識を学ぶだけでなく、学んだ知識を組み立て、新しいものを創造できる力をつけさせることをめざしています。OECD(経済協力開発機構)が実施している「国際学力調査(PISA)」で求められる、学んだ知識を実社会で活用する力を身につけ、グローバル化時代に活躍していける能力が「生きる力」です。
小学校の教師には、難しいことをやさしく教える技能が必要です。そして、やさしいことをわかりやすく、わかりやすいことを楽しく伝えることが求められます。そのために有効なのは、「イメージ化」です。文字だけの情報に、具体的なイメージを与えることで、理解を助けるのです。例えば、歴史の年表も、単なる事実の羅列ではなく、つながりのある一つの読み物として「イメージ化」してとらえられるようにするのです。
小学校の教師は、長い時間、子どもと接し、すべての科目を教えますから、子どもの成長に大きな影響を与えます。子どもの豊かな人間性の育成に関わる難しい仕事だからこそ、やりがいもある仕事だと言えます。
愛知教育大学 教育学部 教育支援専門職養成課程 教育ガバナンスコース 准教授 風岡 治 先生
現代の学校教育現場は、多様化・複雑化しており、教員は多忙を極めています。学習内容が年々変化し、児童生徒一人ひとりと向き合うことが求められ、授業やテストのほかに登下校や給食、掃除の指導、生活習慣指導、集金に至るまで教員の仕事は山積しているのです。
質の高い教育を実現するためには、この多忙を解決しなければなりません。そのキーワードとなるのが、「チーム学校」と「働き方改革」です。
チーム学校では、学校運営をチームの仕事として考え、学校組織の再構築やマネジメント力を強化します。教員が抱える多くの業務を専門職に分担し、教員は本来の教育に専念できる現場づくりをするのです。スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、部活動指導員、図書館司書、英語指導助手など、多くの専門職の人たちと連携しようという動きが加速しています。
キーパーソンとなるのが、事務職員です。校長や教頭、教務主任などとタッグを組み、予算の管理、環境の整備、諸手続き、対外的な折衝などを担える絶好のポジションにいます。学校組織の運営をマネジメントする、教育支援専門職としての活躍が期待されているのです。これが、教員の働き方改革にもつながっていきます。さらに、不登校や外国人、貧困家庭といった子どもが抱える課題に、きめ細かく対応する役割も期待されています。
また、地域連携も不可欠です。文部科学省が推進し、各地でコミュニティ・スクール(学校運営協議会)が発足しています。これは、保護者や地域の人たちが主体となって学校運営に関わる取り組みです。教育ビジョンや課題を共有し、ともに子どもたちを育てると同時に、地域の活性化にもつながります。ここでも、事務職員によるコーディネートが期待されます。
このように、教員がやりがいをもって教育に取り組み、児童生徒が安心して充実した学校生活を送ることを目的とした教育支援体制づくりが急務となっています。
大阪教育大学 教職教育研究センター 教授 島﨑 英夫 先生
教師教育学とは、教師を育てるための学問です。教師をつくる「養成」、国や地域、教育委員会と調整し教育現場と教師をつなぐ「採用」、教師になったあとのキャリアをサポートする「研修」の分野に分かれています。教職や学校教育のあり方、学校や授業の運営、部活動や地域活動のマネジメントなど、その研究分野は多岐にわたります。また、「勉強」「学習」「学力」「生きる力」そして「教育」など、普段なにげなく教育現場で使われている言葉の本来の意味を見つめ直し、教育の本質を問うことも教師教育学の重要な役割です。
この社会の中では、誰もが何らかの形で教育に関わり、教育について語ることができるため、教師のあるべき姿が見えにくくなっているのが現状です。しかし、いつの時代も教師とは子どもたちから憧れられるべき存在です。「常に向上心をもって、自分の興味・関心のあることについての勉強を怠らない」「子どもたちの一歩先を進み、努力する姿勢を背中で伝える」「子どもたちの方を振り返って、めざすべき方向へとリードする」といった力こそ、教師が備えるべき真の指導力といえるでしょう。
子どもたちに憧れられる教師を育てるため、教師教育学は3つの課題に向き合っています。1つ目は、教師に働きかけて、自身が学ぶ姿勢をもつよう促すことです。2つ目は、そのための環境を整えることです。日本の教師たちの週当たりの労働時間はOECD平均より15時間も多いのに、授業準備や研修の時間は減っています。職場環境の改善が求められています。3つ目は、ネットワークづくりです。個々の教師や学校ごとの対応だけでは限界があるため、教育大学や地域と一体となったサポート体制を構築することが求められています。こうした取り組みを研究・実践し、教師を生涯にわたってサポートするために、教師教育学が果たすべき役割は、今後もますます大きくなります。
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英語教員になるためだけの勉強ではなく、その他の職業になるための勉強もできるから
将来体育科の教員になるための免許が取得できるほか小学校教員の免許も同時に取得できることに魅力を感じたため。
1年次から実際に小学校に行って学べる所が魅力で良いなと思い、決めました。
実習が1年の早い段階からあるなど、充実している。基礎をしっかりとやったり、アカデミーがあったりなど、教員採用試験の対策もしっかりできる。
愛知教育大学では、1年次から学校体験活動などがあり、教育現場での活動体験ができるからです。
特別支援学校の5領域全ての学習ができる点
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現代の学校に特化した学びができるからです。プログラミング学習の充実やキャリア教育について詳しく実践的に学べるということを知り受験しました。
聴覚・視覚・発達障がい、病弱、肢体不自由の全ての領域が学べるそうで、近畿では少なくとも調べた限りではこの大学だけで、そこにとても魅力を感じたからです。
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岩手大学 教育学部
東北に教育学部がある大学が少ないうちの1つで、自閉症についての研究をしていたから
サブコースでは教育コースや心理学コース等を一年次後期から選択でき充分に考えてから自分の学びたいものへ向かうことができると感じ志望しました。