国際化が進み、日本語や日本文化を学ぶ人が世界に拡大したこともあり、日本語を世界の中の1つの言語としてとらえ、日本語の成り立ちや構造・活用法、その歴史や特徴を研究する学問です。例えば、日本語が日本文化とどう関わっているかや、方言や性別などによる言葉の違いを文法上のルールとして説明できるようにするなどの研究を行います。
日本語に対する正確で幅広い知識と表現能力を習得します。さらに、日本文化に対する幅広い知識と理解や、外国の言語・文法・文化との比較研究を通して現代日本語の論理的な構造解明をめざします。また、世界中にいる日本語の習得を希望する外国人を対象とした、日本語や日本文化の教育方法や教材についても研究範囲となります。日本語だけではなく、日本文化に対する幅広い理解も求められます。
学校教員免許(国語)を取得して学校教員になる人、学んだ知識を生かすために外国人対象の日本語教師や各国の文化事業コーディネーター、旅行・観光業界やマスコミ・出版関係を含む一般企業に就職する人が大半です。
岩手大学 教育学部 国語教育科 教授 藪 敏裕 先生
漢字には、複数の読み方があります。例えば「行」という字には、音読みだけで「行動(こうどう)」「修行(しゅぎょう)」「行燈(あんどん)」の3つ、訓読みの「行く」「行う」を合わせると5通りもあり、覚えるのは大変です。実は、中華人民共和国の普通話(公用語)では行う・行くなどの意味のときは3つとも「xing(シン)」という同じ発音をするのですが、なぜ日本語には複数の読み方があるのでしょうか? それは、いつ、誰がその漢字を日本に持ち込んだのか、によるのです。
修行の「ぎょう」という音は、飛鳥時代以前に日本に定着していた漢字音で、隋唐期の長安から帰国した日本の留学生たちが、この漢字音を長江以南の音を意味する呉音という呼称で呼んだからだとされています。一方、遣隋使・遣唐使の時代になると、長安地方の音韻体系を反映した漢字音である漢音とよばれる音が入ってきます。行動の「こう」という漢字音などがそれです。桓武天皇は、延暦11(792)年に漢音奨励の勅令を出しますが、既に広まっていた読み方を変えることは難しかったのです。その後、鎌倉時代以降に留学僧や民間の商人がもたらした音は唐音や宋音と呼ばれました。「行燈」の「あん」などの漢字音がそれです。
また、中国から入ってきた言葉が日本人に発音しにくいものだと、少しずつその読み方も変化していきました。例えば「蝶々(ちょうちょう)」は、旧仮名遣いでは「てふてふ」と表記しますが、中国唐代の長安での「蝶」の発音は「d’iep(ディエップ)」という音だったようです。しかし、日本人はこの「p」音に「fu」音で対応し「てふてふ」と表記され、ハ行転呼により「fu」が「u」となり「てうてう」さらに「ちょうちょう」と変化していきました。長い時間をかけてさまざまな人や場所を行き来するうちに、中国でも日本でも少しずつ変化し、現在では全く異なる発音になったのです。
千葉大学 文学部 人文学科 日本・ユーラシア文化コース 教授 岡部 嘉幸 先生
「外では雨が降っているようだ」という文章を読んだとき、通常は「雨が降っているらしい」という推定の意味でその文章をとらえます。現代の言葉における「~ようだ」は推定の意味を持ち、「いつもより混んでいるようだ」という様態や、「まるで、夢でも見ているようだ」という比喩の意味でも使用されます。しかし江戸時代後期の文献に登場する「~ようだ」という表現は、現代とは少し異なる意味合いで使われていました。
例えば、江戸時代に著された作品には、目をまわした登場人物が「目がまわるようだ」と話すシーンがあり、比喩ではなく自分の内的感覚を表現する際にも「~ようだ」が使われていることがわかります。日本語の単語はしばしば複数の意味を持ちますが、その意味の「中心部分」が変わってきているわけです。このように、時代の移り変わりとともに、言葉もダイナミックに変化しており、そうした言葉の意味の変化やシステムとしての文法を研究するのは「日本語学」という学問の目的の1つです。
現代でも、言葉はどんどん変化しています。例えば、「キモい」という若者言葉ですが、これは単に「気持ち悪い」という言葉を略したものではありません。「気持ち悪い」には「車酔いで気持ち悪い」という自分自身の感覚を表す場合と、「蛇は気持ち悪い」という対象への評価を表す場合がありますが、「キモい」は前者の場合には使われず、もっぱら後者の意味だけで使われます。つまり、「キモい」は「気持ち悪い」よりも意味が狭いわけです。
言葉の変化に敏感な人の中には、「『キモい』は用語として正しくないから使うべきではない」と主張する人もいます。でも、そこで思考を止めてしまっては何も先に進みません。正しくないのに広く若者に使用されているということは、そこになんらかの理由があるはずです。それを日本語学の観点から分析すると、思いもかけない事実を発見できることがあるのです。
東京女子大学 現代教養学部 人文学科 日本文学専攻 教授 山本 真吾 先生
日本文化とされるもののルーツをたどってみると、中国や韓国などの外国文化にたどりつきます。日本でゼロから生まれた文化はそれほど多くありません。歴史的に見ると、日本人は基となった外国文化に「ひねり」を加えていくことで日本文化を発展させてきたことがわかります。また、日本では新旧や国を問わず、多くの文化が共存しています。こうした「かさね」という重層性も、日本文化の特徴のひとつです。
日本語にも、「ひねり」と「かさね」が生きています。例えば、ひらがなやカタカナは中国由来の漢字にひねりを加え、早く楽に書けるようにしたものです。また、日本人は用途によって文字を区別して、数種類の文字をかさねて使い続けています。
語彙(ごい)にも同じことがいえます。日常生活に必要な日本語の語彙は10,000語程度とされていて、ほかの言語と比べてとても多いのです。外来語の「ホテル」を漢語で「旅館」ということもあれば、和語で「やど」ということもあるように、日本語では同じ対象を複数の語彙で表現することができます。これは、さまざまな言葉を吸収し、受け入れてきた結果です。
新横浜駅の新幹線ホームで「停車後、すみやかに発車いたします。」というアナウンスが流れてきました。この「すみやかに」という言葉、「すぐに」と意味は似ていますが少し硬い感じがします。いったい、こういった言葉はいつからあったのでしょうか。例えば『源氏物語』や『枕草子』など、女性の書いた古文の作品を読んでみると、「とく」という古語がこの意味に相当することがわかります。しかし、同じ平安時代でも、漢文を読んでいた男性たちの書物には、「すみやかに」という言葉が出てきます。現代に生きる私たちの日本語も、共通語一つではなく、方言、女性語、若者語というように複数の言葉があるのと同じく、昔の日本語も貴族女性の言葉一つではなかったはずで、多様であったことがわかります。
高知大学 教育学部 准教授 岩城 裕之 先生
方言の研究をしていると、人によって同じことを言うのにも言い方が違うことがあります。例えば農家の人は「そもそも……」とのんびり話し始めますが、漁師さんはまず「こうだ!」と言い放ってから、理由を問われれば答えるという傾向が見られることがあります。このようなものの言い方には、個人差だけではなく地域差があることもわかってきました。日常のコミュニケーションで、「ちょっとあの言い方は……」と思うことがあっても、それはもしかしたら地域差なのかもしれません。
沖縄県の宮古島の方言のように、ほかの地域の人にとって理解が難しい方言を、言語学的には「宮古語」と呼びます。同じように、沖縄本島北部の言葉も「国頭語」と言います。一方で、同じ国内で日本語から分かれた言語ですから、「宮古方言」「国頭方言」という言い方もできます。一口で方言と言っても、その定義は難しい面があります。
また、日本語の方言は地域による違いであることが多いのですが、世界的にみると必ずしもそれだけではありません。社会的な属性、例えば貴族やそれ以外など、属する階級に由来する方言もあります。
2011年の東日本大震災では、数百キロにわたって海岸線が津波被害を受け、拠点病院のほとんどが被災したため、首都圏をはじめ、各地から医療従事者が駆け付けました。このときから、医療現場での方言の研究が始まっています。診察時に問題となるのは、方言がまったく理解できない場合はもちろんですが、同じ単語なのに共通語とは意味が違うといったケースです。もしも、体調や体の部位を表す表現を医師や看護師が誤解したら、最悪の場合、命の危険にもつながります。
将来の地震や津波など大規模災害への備えとしても、避難場所となる予定の学校には、体調が悪いときに使いそうな方言を一覧できる表を準備しておくことが有効です。方言研究は、このように社会に役立つ研究でもあるのです。
桃山学院大学 国際教養学部 国際教養学科 Japanese Studies専修 教授 友沢 昭江 先生
日本語を勉強している人は、アジア圏内に圧倒的に多く、何らかの教育機関で学んでいる人は約400万人です。30年間で30倍に増えました。昔からアジア圏に多いという傾向は変わりませんが、学びたいというその理由は変化しています。戦前から日本研究として、日本の歴史や茶道、歌舞伎、浮世絵などを勉強している人はいました。その後、日本が高度成長の時代に入って、日本製品や技術が海外で知られるようになり、それを学びたいという人たち、日本人観光客とのコミュニケーションをとる必要がある旅行業の人たち、そのような人が日本語を学ぶようになりました。それが落ち着き、日本語学習者が急増するという現象はなくなりましたが、増え続けていることは間違いありません。
現在は日本のアイドル、アニメ、ゲームソフトなどのサブカルチャー、ファッション、和食が好きだからという人たちが日本語を学んでいます。日本語を勉強することでお金を得ることが目的ではなく、純粋に日本の文化が好きなので学んでいるという人も多いのです。特にヨーロッパでは日本のサブカルチャーは大人気です。このように「その国の文化が好き」という動機で語学を学ぶことは、上達が早いという傾向が見られます。
熱心な日本語学習者が増えたことで、世界中で日本語教師の需要が高まっています。私たち日本人は生まれたときからシャワーのように日本語を浴びているので、無意識に日本語の文法を身につけています。そのため日本語を初めて学ぶ外国人にわかりやすく効果的に教えるには、あえてもう一度日本語を意識的に考えてみる必要があります。例えば「あの人がジョンさんです」と「あの人はジョンさんです」という2つの文はどう違うでしょう。誰にでもわかるように説明するのは案外むずかしいものです。日本語とはどういう言語なのかを考えることは、それを使う日本人や日本文化について深く、広く、新たな視点で考えることにもつながっていきます。
発送予定日:
関東圏で、国立では珍しく歴史学コースがあったから。
日本文化だけではなくアジアの文化を広く学べるため
発送予定日:
英語と日本語の勉強の両立ができること。英語はキャリア・イングリッシュ・アイランドで自分の空いている時間に英語力を高められるのが魅力。
日本語学の分野が大切にされている
教職の免許を取るのに早くから現場を見せてくれるカリキュラムになっていること。
小学校の教員免許を取得しながら中、高の免許も取得できるため
発送予定日:
私が好きな日本語について学べる。博物館が近い為取得したかった博物館学芸員の資格もより良い質で取ることが出来そう。
英語も学べてエアラインの授業があるというところに魅力を感じたからです。
岩手大学 教育学部
複数の学校教諭免許を取れ複数の道を拓けるから
地元との繋がりが密接なので、ダイレクトに岩手の子どもたちのためになる研究ができるとおもったから。